2008年2月11日月曜日

またひとり、いなくなった

硬骨のジャーナリストがまた、ひとり世を去った。

本田靖春さん。享年71歳だった。
昭和8年、旧朝鮮・京城(現ソウル市)生まれ。
30年早大卒。読売新聞に入社し、社会部記者として活躍する。
45年退社後、吉展ちゃん誘拐事件を描いた「誘拐」、差別問題に根ざした金嬉老事件を題材にした「私戦」、読売時代の先輩記者のことを取り上げた「不当逮捕」など、迫真のノンフィクションを次々と執筆した。

記者を志望してからというもの、僕はこれらの著作をむさぼるようにして読んだものだった。
僕にとっては、「不当逮捕」がもっとも印象深かった。
無頼派で、アウトローで、野生児で、今のサラリーマン化した優等生的な新聞記者とはまるで正反対の「ブンヤ」が、そこにいた。

以前、このブログで僕が「師匠」として尊敬しているジャーナリストとして斎藤茂男さん(元共同通信編集委員)のことをあげたが、あと2人、「はるかかなたの目標」にしていたのが、朝日新聞の「天声人語子」の深代惇郎さんと、この本田さんだった。

僕が記者になった当時、深代さんはすでにお亡くなりになっていたが、斎藤さんには1度、お目にかかることができた。

本田さんにもぜひ会いたいと思っていた。
数年前、取材を申し込んだが、「体調を崩していて、取材はとても無理です」と断られていた。かえすがえすも残念だった。

僕はしょせん、できの悪い記者で終わりそうだが、先輩たちの残してくれた「記者魂」だけは受け継ぎたい、と強く思う。

(2004/12/7)

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