2008年2月10日日曜日

チャリ大好き!

自分がこんなにチャリ(自転車)が好きだと思わなかった。
文京区に引っ越してからというもの、休みのたびにチャリで出かけている。きのうはフィットネスクラブ見学のため東京ドームへ、約12分。裏道を通ると、スイスイ行けるので気持ちいい。時々、お邪魔する白山の知人のお店は8分。家族で上野動物園に遊びに行くと30分。このほか、池袋まで30分、王子まで22分。先日、ためしに大手町の会社まで行ってみると、こちらも25分だった。こりゃ、まんいち電車が止まっても大丈夫だとわかったし、いま、真剣にチャリ通勤も考えている。

子供のころ、僕たちの間では5段変則や10段変則の自転車がはやっていた。

僕は、無理やり親にねだって手に入れた宝物にまたがり、港までの下り坂をよく疾走したものだった。僕の故郷・小樽は坂の多い町。上りは地獄だが、下りは風を切って走ることができ、爽快だった。

以前、同郷の天才作家・京極夏彦さんのことをこのブログでも書いたが、彼は「自転車に乗れない運動オンチだった」という。僕たち野球少年は、「巨人の星」にあこがれ、夕暮れまでボールを追いかけたが、京極さんはこうした子供の遊びの王道とも無縁だった。
グローブもバットも自転車もねだったことはなく、その分、本の世界にひとり、没頭した。小学4年のときには旧かな、旧漢字で綴られた民俗学の権威、柳田国男の「全集」を読破、「国会図書館にある本、全部ほしい」と夢想した。

京極さんとのインタビューの後、僕は自分と娘(長女)のことを思い浮かべていた。インタビューの1年ほど前、小学校1年だった娘に自転車の乗り方を教えようとした。娘は臆病な性格で、運動が苦手。せっかく祖父母に買ってもらった自転車になかなか乗ろうとしない。たまに乗ろうとしても、ちょっとペダルをこいではすぐに怖がる始末だった。
家のそばの公園で特訓が始まった。

「ほら、パパの乗るのをよく見てごらん」「最初に思い切ってこぐんだよ」「右、次は左もこいで。あーあ、怖がったらダメだよ!」

だが、何回アドバイスしても、娘の自転車はほとんど前に進まず、すぐ倒れてしまう。

「何度言ったらわかるんだ。このバカ!」

親の罵声に娘は泣きじゃくる。

「あー、もうやめた、やめた。お前なんか乗れなくてもいいよ」

堪忍袋の尾が切れた僕は、娘を公園に残して帰ってしまい、特訓はわずか1時間たらずで終わってしまった…。でも、そんな娘も、その後まもなくして自転車に乗れるようになった。何ひとつ、怒鳴ることも、案ずることも必要なかったのだ。

もうひとつ、別の日のことも思い出した。

娘が幼稚園児だったときの父母参観。
この日は、竹とんぼをつくる工作の授業だった。お絵かきや工作が大好きな娘だったので、余裕をもって見ていたが、まわりの子供たちが次々竹とんぼを完成させて父親の元に駆け寄ってくるのに、いつまでも待ちぼうけ。
それでも「好きだから凝っているんだな」と思っていたが、気がつけば残っているのは3人だけ。「何、モタモタしてるんだ!」と叫びたくなるのを教室では我慢したが、自宅に戻ってきてから妻に向かって「まったくもう、イライラしたよ」とブツブツこぼした。

あーあ、なんということだろう。口では「子供の個性を」と言いながら、心の中では「人並みに」「みんなと同じ程度に」という横並び意識がはびこっていたのだ。

「お前も自転車くらい乗れるようにならなきゃ…」。
京極少年に向かって、僕ならこう言ってしまったかもしれない。でも、彼の両親は、子供を追い詰めることをしなかった。京極さんは自転車や野球には無縁な代わりに、好きな本の世界を浴びて育ち、その才能は30年後に花開いたのだ。

京極さんからも教えられた気がした。別に、自分の子供を天才に育てたいと思っているわけじゃないけど、「子供たちを急がせないで。待ってあげよう、と」。

さあ、来週は子供たちとのんびりチャリでどこに行こうかな。

(2004/8/22)

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