2008年2月11日月曜日

あと半年

「あと半年…」
母の主治医から、そう宣告された。

マネー教育を目的とした「1億総億万長者プロジェクト株式会社」を起業してから忙しく、先週末、3か月ぶりに入院中の母を見舞った。
ベッドの上に、なんとか起き上がれるようになっていたし、食欲もあって「蟹が食べたい、松前漬けが食べたい」と言っていて、前回のときより元気そうだった。
ただ、本人には自分の体のことなので、なんとなくわかっているのか、身の回りや資産の整理を急いでいた。また、生前に戒名をもらっておきたいとも希望したので、信仰しているお寺に頼んでつけてもらった。

肺の機能がどんどん低下し、自力で呼吸ができないので、いまでは酸素マスクをしている。主治医の説明だと、肝臓にも転移が始まっているという。
「肝臓に転移したら、だいたい半年ですね」
主治医が、そうたんたんと告げるのを、僕もたんたんと聞いた。

乳がんが再発してかれこれ5年近く。
医師も、僕らも、最善を尽くしてきた、と思っている。
「なんとか最後に、家に帰してあげたかったけど。酸素なしじゃダメだし、うーん、難しいねえ」と主治医も辛そうだった。

さて、これからどうしたらいいんだろう。
起業した会社をほうっておくわけにはいかないし、かといって母の面倒も見ないといけないし。

僕が起業に踏み切った理由のひとつが、母の姿だった。
「成功するか失敗するか逡巡している暇はない。元気なうちに、なんでもチャレンジしよう」
そう決意したのだ。

母も、僕の会社が順調にスタートしていると聞き、「それならよかった。男は一生懸命仕事をしなきゃダメだ」と言っている。起業直後の苦しみはいろいろあるが、ベッドで横になるだけの母の苦しみに比べれば、天国みたいなものだ。

でも、あと半年。
本当は会社も投げ捨て、母のそばにずっといてあげるべきなのだろうか。
そうしない僕は、親不孝者なのかもしれない。

(2005/12/1)

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